黒鯛の落とし込み釣り(ヘチ釣り)の基本行動で重要な事は、2~3m間隔で堤防を探り歩く事と、エサを落とすスピードだと思います。 

ヤルキのある黒鯛の場合、エサを落すスピードが速かろうが遅かろうが関係なく反応します。 

しかし、極普通の条件では、普段見慣れないスピードで落下するエサには警戒し捕食行動を取りません。


■自然なスピードでエサを落とすとは?

落とし込み釣りで一番難しい事は、エサを自然なスピードで落す事です。

昔から言い伝えられている内容は、「使用するエサを海中に放り込んだ時、エサがフワフワと沈んで行くスピードを演出することが重要」との事です。

この自然な演出が、警戒心の強い黒鯛に効果的だと言われています。
そして、一般的な落し込み釣りにおける最も良い釣り方は、オモリを使わずに、エサ・ハリ・ハリス・道糸の重さでだけで落すことだと教わりました。


しかし、実際にオモリ無しの状態で釣りが可能なのは、風速が0~3mとナギに近い条件や、提坊の風裏などを狙う場合だけだと私は思います。

特にタナから底までの全ての水深を探る場合、風・波・潮の流れの影響で、オモリを使わないと釣りづらくなる条件は多いです。

また、タナ釣り限定なら風速が3~5mぐらいまで釣りが可能ですが、黒鯛特有の止まるアタリを見落とす危険性があるので、オモリ無しの釣り方は、私個人の意見としては、あまりお勧めできない釣り方となります。


■どのくらいのスピードで落とすのが良いか?(一般論)

1.一般的には、風・波・潮の流れ具合・エサの重さに合わせオモリを選択する。
 ⇒落とし込み釣りでは、B~4Bのガンダマを使用する方が多い。
 ⇒フカセ釣では、5号~極小8号までを使用する方が多い。

2.エサを自然なスピードで落とす。
 ⇒イトフケの作り方は、エサの落下速度に合わせる。
 ⇒イトフケを作りながら竿先を下げる動作で探る。

以上が、釣り雑誌などで紹介されている一般的な説明文です。


皆さん、この説明でエサを落とすスピードがわかりますか?

私はわかりません。
そして疑問が生まれます。 

「風速3mの時、ガンダマは何Bにするべきでしょうか?」、
「使用するエサがカニエサの時、ガンダマは何B?」、

「使用するエサがカラスガイの場合は何B?」
「でっかいタンクガニを使う時、ガンダマは何B?」、

「潮の流れが少し速い、ガンダマは何Bをプラスすべきか?」など疑問だらけです。


例えば、先輩の釣り師達のガンダマを見ると2Bや3Bが付いています。
自分も真似してハリのチモトに2Bのガンダマを打ったと考えてください。

この状態でエサを落とすと、エサを海中に投げ込んだ時のスピードが『自然なスピード』より早くなると思いませんか?
風と波で海がガボガボしているとしてもです。

とゆう事は、「これって釣れないスピードではないのか?」など、多くの疑問がでてきます。


■落とし込み師のガンダマ選択(一般編)

長年落とし込み釣りをされている方は、どのようにガンダマの大きさを決めているのでしょうか?
そして、仕掛けを落とすスピードについて、どのように考えているのでしょうか?


私が落とし込み師に取材した結果は、

A:適当に落としている。 落とすスピードについて真剣に考えた事はない。

B:この釣りは先輩に教わったので、先輩と同じように落としている。

C:堤防で、普段から良く黒鯛を釣る黒鯛師の釣り方を真似して落としている。

D:『エサを自然なスピードで落とす』と言われている事は知っているが、難しそうなので実践した事はない

そんな感じです。 アハハ・・・。



■名人のガンダマ選択

では、落とし込み釣りの名人と呼ばれる方は、どの様な考え方でガンダマの大きさを決め、自然なスピードを演出しているか?

結論を先に申し上げると、エサを落とすスピードは皆さんバラバラです。

私が名人と称される方の釣りを見て感じたことですが、エサにハリを刺さずに海中に投げ込んだ時の状態より、かなり早くエサを落としています。
しかしこれで黒鯛が釣れるのです。 なぜでしょう?


名人は、『自分のお気に入りのスピードとイトフケ』の作り釣りをします。 

そして、長年の経験から、当日の風・波・潮流れ・エサの大きさ・海水のニゴリ具合・狙うポイントや地形・探る水深(タナか底か)を考慮し、お気に入りの大きさのガンダマ(B~4B)を選びます。

もちろん、ガンダマを打たない状況があるかもしれませんし、8号~Bまでの間の小さなガンダマや、糸オモリ(ヒューズ)を多用する方もいらっしゃいます。

私が名人の釣り方を見て感じた事は、「落とすスピードに関し、あまり意識していないのではないのか?」との結論でした。

そして何名かに取材すると
 「落下スピードは適当」、
  「普段からこのくらいのスピードで落とすよう心掛けてガンダマを選択する」、
   「タンクガニが大好きなので、ガンダマを打たない事が多い」、
    「小さいタンクの場合はヒューズ(糸オモリ)をハリに何回か巻く」
との回答でした。

そう、皆さんお気に入りのスピードがあります。
そのスピードと釣り方で黒鯛を何匹も釣り上げた経験から、自分の好きなスピードで落としています。


■私の拘り・秘伝の落下スピード

私は、エサの落下スピードに拘りを持つ黒鯛師です。 
なぜ拘りを持ったかについてご説明しましょう。 

落とし込み釣りを始めた当初、タナ釣に於いて、
師匠には黒鯛のアタリがあるが、私には全くアタリのない状況を体験しています。


この時、エサを10~15回落とせば1回アタリがある最高の条件でしたが、私には全くアタリが出ないのです。

その理由を調べた結果が『エサの落下スピード』でした。
そして私は、師匠の釣り方を見る事で、落とし込み釣りの真髄をそこに見たのです。

その真髄とは『エサを落とすスピード』であり、その後、私はこのスピードを『秘伝のスピード』と呼ぶ事にしました。


また、船の上から水面下30cm~1mに見える黒鯛を釣るために色々と実験しました。 

その結果、表層付近に生息する黒鯛は、エサの落下スピードにより、エサに反応する場合と警戒する場合とがある事がわかりました。

同時に、『エサにハリを刺さずそのままの状態で投げ入れるスピード(自然なスピード)より、ハリを付けたエサを投げ入れる、少し早いスピードの方が黒鯛の反応が良い事もわかりました。

そしてこの実験でわかった事は、秘伝のスピードに反応する黒鯛の数が異常と思えるほど多いことでした。


■秘伝のスピードで落とす方法

私の落とし込みスタイルは、どんな条件でも、常に秘伝のスピードでエサを落とす事です。
但し、沖目狙いはガンダマの重さで落とします。


秘伝のスピードは、ガンダマB~4Bを使い、道糸をピーンと張った状態で、竿を下に下げる動作でエサを落とします。
このスピードは常に一定で、竿を持つ手に覚えさせる事により実現できます。


竿を下げるスピードが秘伝であり、このスピードは文章で説明することができませんので、実際に私が落とす姿を見て覚えるしかありません。

ちなみに、常に道糸を張った状態でエサを落としますので、風が強く吹いている場合でも、エサの大きさや重さが違う場合でも、常に一定のスピードで落とせます。

また、常に一定のスピードでエサを落としているので、黒鯛特有の止まるアタリが出た瞬間や、不自然な道糸のフケ方に、素早く気付く事ができます。

秘伝のスピードを言葉で表現すると、早くもなく・遅くもなくって感じです。
早いと繰り返し記載しているように警戒しますし、遅いと止まるアタリの判断がしにくくなるので程々のスピードとの表現となります。


そうそう、落とし込み釣りで有名な、黒友会の山下正明さん。
この名人の落とし方が私や師匠の釣り方に似ています。

実際には、私の落とすスピードは山下名人より少し遅めです。
山下名人の釣りビデオは沢山販売されていますので、興味がある方は購入されてはいかがでしょうか?


■師匠の落とすスピード

私は師匠が行なう釣り方を見て秘伝のスピードと落とし方に気付きましたが、本人はこのスピードと釣り方を意識して行なっているのではなく、無意識に行なっているそうです。

そう、長年の落とし込み釣りで培った釣り方であり落とし方でした。


そうそう、私の師匠は佐藤達夫さん(野島堤防の名人と言われている方)です。
今は、東京湾黒鯛研究会の会長さん。
師匠の話では、自分より弟子の方が優秀で、釣果で負けっぱなしだそうです。 アハハ・・・。


■結論

各堤防で日頃から黒鯛を良く釣る方は、エサを落とすスピードを意識して行なっているのではなく、
今までの経験と自分の好きなスピードで行なっているとゆうことです。

落とし込み釣は、「先輩釣り師の釣り方を目で見て覚えろ」と昔から言われています。
皆さんも、多くの黒鯛師の落とし方を見学し、ご自分のスタイルにあった落とし方をされるのが良いと思います。


とゆう事は、「自然なスピード」って何? 
意識しなくて良いとの事?

では、なぜ落とし込み釣りでは、『自然なスピードでエサを落とす』との表現を使うのか?
ムムムムム・・・、良くわからん。


私の経験と実験結果から言える事は、使用するエサを針を刺さずに海中に投げ込んだ時より、少々早めのスピードに反応が良いと感じています。

なので、ハリにガンダマを取り付けて、適当に釣っても大丈夫だとゆう事。
但し、落下スピードが速いと警戒されやすいので、秘伝のスピードを覚え、仕掛けの落下スピードを常に一定にする釣りができれば釣果倍増と思います。

尚、黒鯛の活性が良い場合は、エサの落下スピードは全く関係ありません。
アタリの取りやすいスピードで落とせばヒットするので、黒鯛って魚は警戒心が強いのかバカなのか未だに良くわかりません。