この講習会(このサイト)で紹介する内容は、題名の通り『秘伝』です。
私が落し込み釣りをはじめて教わった際、「この釣り方は決して他人に教えるな!」と、師匠の教えがありました。
その内容を特別にご紹介します。

但し、これから説明する講習会(このサイト)の内容だけでは、落し込み釣りの『核心部分』についてを5割程度しかお伝えすることができません。
残りの5割を取得するには、実際の釣り方を目で見て覚えるしか方法がないことが、この釣りの難しさだと思います。


■師匠の教え方
この釣り方を教わった時に感じた事は、まるで中国の拳法を師匠から伝授されるようでした。

 秘伝の奥義

 落し込みが上手くなりたければ、他の釣り人の釣り方は絶対に真似してはいけない。


 私(師匠)の釣り方を目に焼き付け、教えた通りの釣り方をすれば必ず釣れるようになる。


 一度覚えたこの釣り方は、決して他人に教えてはいけない。



正直申し上げて、この説明を聞いた時はすごく緊張しました。

私が、「なぜ他人の釣りを真似してはいけないのか?」と尋ねると、
「落し込み釣りで最も重要なのは、基本動作と基本行動」、
「他人の釣り方を真似すると変なクセが付き、釣れない釣り方を実践する恐れがあるからだ!」とを言われました。

また、「なぜ他人に教えてはいけないのか?」と理由をたずねると、
「皆が釣れるようになると、自分の竿に掛かる魚の数が減ってしまうからだ!」との事でしたので、この答えを聞いた時には、安心感から大笑いしてしまいました。





 奥義 基本動作と基本行動 (神奈川県.野島堤防での釣り方 水深は3mと考えて下さい)

 ①エサを水面から自然なスピードで底まで落とす。


 ②エサが底に付いたら仕掛けをスーっと優しく上げる。


 ③2~3m外れた場所に仕掛けを再投入する。 ⇒これを繰り返す。


 ④魚が掛かったら、竿を上げた時に手応えがあるからスグ分かる。


 ⑤アタリの殆どが止まるアタリなのでラインが沈まなくなる。
 イメージとしては、エサが底に着底した時と同じような状態となる。
 まあ、何匹か魚を釣れば分かる。
 *アタリについては別の項目で説明しております。


なんとビックリ! 釣り方の基本は、これだけでした!
「これのどこが秘伝なの?」って感じです。

私が、「たったコレだけなの?」と聞くと、
「そう、これだけ。 もちろん、これ以外に狙い場所の選択がある」と話していました。

しかし、なぜこれだけで良いか?
その理由がわかった瞬間、「ナルホドね!」と納得できたのです。






エサを、いかに自然なスピードでに落とすかで、『釣れる/釣れない』が決まります。

このスピードは、早くても遅くてもダメなのです。
そう、このスピードが”秘伝”だったのです。

師匠の釣り方は、どんな状況でも海面から底まで常に一定のスピードでエサを落として行きます。

この事により、全てに水深を釣れる可能性の高いスピードで探る事ができるのです。

なので、他の釣り人の釣り方を参考にしてしまうと、黒鯛が警戒する『釣れないスピード』を覚える可能性があるので、「他人の釣り方は真似するな!」だったのです。


但し、活性の高い黒鯛に対しては、エサの沈降スピードが速かろうが遅かろうが捕食してくれます。

しかし、極普通の条件では、違和感のあるエサは警戒し捕食行動を取りません。
そう、違和感を感じたエサに反応してくれないので、釣れない状態になってしまうのです。

ちなみに、船の上から水中の黒鯛の行動を見ていると、目の前にエサを落としても反応しない黒鯛は多いです。

多少エサに興味を持った黒鯛は、エサの目の前まで移動しピタっと静止。
そしてエサと睨めっこ。

黒鯛は静止したまま動かなかったり、反転してゆっくり潜っていったりと色々な危険回避の行動を取ります。

しかし、エサに警戒心を持っていない黒鯛は、口を空けてパクリと銜えます。
まあ、エサに対する警戒心で捕食行動が異なるって事ですね!





エサの着底はラインの変化で確認する。 これができないと、この釣りは上達しない。

エサが着底したら2~3秒数えて仕掛けを上げろ。
魚がヒットしていれば重くなるのでスグわかる。


この時、エサを海底に置く時間は2~3秒と教わりました。

その後、関東で有名な名人から仕掛けを上げるタイミングを見たり聞いたりしましたが、実際はバラバラです。
皆さん、1~6秒の間でした。

結論から申し上げると、実際、どのタイミング(時間)が良いかは好き好きの問題のようです。


ちなみに、現在の私は0秒、底に付いたらと感じたら即座に『聞きアワセ』です。
師匠は、「ラインに出る(動く)微妙なアタリが見たい」との事で2~3秒待ってから仕掛けを持ち上げます。

但し、仕掛けを上げるタイミングが遅いとエサを潰されて終わりの時もあるので、どのタイミングで上げるかは釣り人の好みの問題となります。





参考:『聞きアワセ』の語源に付いて

落し込み釣りにおける黒鯛のアタリは、アタリと判断できない微妙なものばかりです。

道糸にわかりやすい変化が出れば良いのですが、実際には『アレ?』と言った感じのアタリばかりとなります。

そして、最も発生率の高いのがアタリが、沈んで行くラインが一瞬止まる『止まるアタリ』です。


このアタリの発生率を私が調べた結果、『止まるアタリ』がアタリ全体の約7割を占める為、ラインに違和感を感じたら『聞きアワセ』を行い、『アタリなのか? 風や波の要因なのか? 勘違いなのか?』を判断する必要があります。

この時、即座に仕掛けを持ち上げ(聞きアワセ)状況の確認(アタリなのかの判断)を行なわないと、黒鯛は違和感のあるエサを吐き出してしまいます。

以上の様に、落とし込み釣りにおける黒鯛のアタリは、アタリと判断できない微妙なものばかりなので、仕掛けを少し持ち上げ、黒鯛なのか別の要因なのかを『聞いてみる』との表現と、竿を上げ魚の重さを感じたら『あわせる』との表現を掛け合わせ、『聞きアワセ』と言われるようになったようです。






参考:『聞きアワセ』の方法

一般的なアワセとの表現は、竿を上に持ち上げビシッと道糸に重みを乗せるイメージがあると思います。

しかし、落とし込み釣りにおける聞きアワセの動作は、竿を優しくスーっと持ち上げる感じとなります。

持ち上げる幅は、ヘチ釣りでは10~50cmですが、沖目狙いや長竿を使った場合は、10cm~3mぐらいまで様々です。

  
   魚の手応えに緊張して竿を急激にビシっと立てると、ハリの結び目やラインが切れる危険性があります。
   なので、中央の釣り人の位置で竿を止めるのが、短竿を使ったアワセの幅となります。





参考:私の『聞きアワセ』の方法

私は、エサが着底した瞬間に仕掛けを上げる動作に移る釣り方をしますが、それには理由があります。

長年落とし込み釣りを行なっているとわかるのですが、
水深3m前後の堤防で底狙いの場合、黒鯛が最も多くヒットする水深は海底(ベタ底)から10cm以内となります。

2番目にヒット率が高いのが海底から10~20cmの間、
3番目にヒット率が高いのは海底から20~30cmの間となります。(私の調査結果)


    


ゆえに、エサが海底に付いたと思っている状況が、実は黒鯛がエサをくわえている場合もあるとゆう事です。

この為、私はエサが着底した時、1~6秒数えて仕掛けを上げるのではなく、『黒鯛がエサをくわえたので止まるアタリが出た』と考え、即座に聞き合わせの動作に入ります。

尚、仕掛けが海底(ベタ底)に到着する前に道糸の動きに違和感を感じた時には、聞きアワセを行ない、黒鯛のアタリなのか別の要因なのかを確認します。

この時、道糸に重さが加わっていれば即アワセ、異常がなければそのまま仕掛けを落しても良いし、仕掛けを上げ別の場所を探っても良いです。




「2~3m外れた場所に仕掛けを再投入する」は、いかに効率良く黒鯛の近くにエサを落とすかを考えた釣り方です。

考え方としては、エサを基準に半径1m以内にいる黒鯛は、「食い気があれば、上から落ちて来るエサに対し高確率で反応し捕食する」と言う、黒鯛の習性を利用した攻め方となります。 



   


この考えを基に探り方を考えると、2~3m間隔で堤防を探る事により、堤防全体、水面付近から海底付近までをキッチリ探ることができるとの結論になります。


  黒鯛が水面から落ちて来るエサに反応する範囲は、今までの調査である程度明らかになっています。(私の実験データ)

それは、黒鯛を中心とする半径1m以内にエサを落せは、高確率で反応するとの事。

そして、最大2mぐらいまではエサを追う事がわかっていますが、追わない魚もいるので、基本的には1m以内であれば反応するとの表現を使っています。

面白い現象としては、黒鯛の後方(尾ビレ側)に落ちるエサにも反応する事です。



とゆうことは、黒鯛は、半径1m以内の上方向から落ちてくる物が全て見えているとゆう事。
もちろん死角はあるだろうし、黒鯛の身体より下方向のエサについては、どの程度見えているのかわかりません。


但し、黒鯛がエサに反応しない場合も多々あります。

それは、魚の活性が悪い場合、
 人間の気配を感じた場合、
  上から落ちてくるエサに不信感を抱いた場合(人間の罠である事を察知)、
   カラスガイの層に顔を向けガリガリしている場合などがあります。

また、私が黒鯛に近づいても全く反応しない魚もおり、目の前20~30cmの場所にエサをそ~っと落しても見向きもされない事があります。
逆に、人間が落したエサに警戒しサッと逃げる魚や、スーっと海底に沈んで行く(泳いで行く)魚もいます。

よって、食い気のある黒鯛と人間の罠である事に気付いていない黒鯛は、1m前後離れた場所に落下するエサに反応し捕食するとの結論になります。






参考:落し込み釣りの不思議

私が落し込み釣りを始めた当初より、2~3m間隔で堤防を探る釣り方は、
『ホントに黒鯛との出会いを増やすことができる釣り方なのか?』について、長年疑問を感じていました。

それは、私が落し込み釣りを覚えた野島堤防では『約8割の魚が底周辺でヒットする』との話を、この釣りをはじめた当初師匠から聞いていたからです。

そして経験を重ねる事で私も一人前の落し込み師となり、このヒットする水深の割合は私の体験とも一致します。

しかし、「この割合は間違いない」と確信すると同時に、心の中では、『効率の良い攻め方をすると底周辺にエサが漂う時間が少なすぎる』との疑問が膨れ上がりました。


例えば、仕掛けを2~3m間隔で落す方法で堤防を1時間探り続けた場合、底周辺にエサが漂う時間は10~15分ぐらい。
それ以外の45~50分の釣りは無駄とゆう事になります。 

この時間配分を常識的に考えると、底周辺でのヒット率が約8割なのだから、底周辺にエサを漂わせる時間を30~40分ぐらいにした方が釣れる確立が増すと、誰しもが考えるはずです。

ではなぜ、落し込み釣では『2~3m間隔で堤防を探る釣り方』を推奨するのでしょうか?
その謎は、黒鯛の捕食行動を理解する事により明らかになります。

    



この図は、黒鯛がエサ発見し捕食するまでの行動を表しています。
黒鯛はエサを発見すると、素早くエサに急接近し捕食行動に移ります。

エサの発見が早ければ海面方向に向かって泳ぎ、発見が遅れれば海底方向へ向かって泳ぎます。

また、発見したエサをなんの躊躇もなくパクリとくわえる事もあれば、エサの前で急停止し、目の前のエサに異常がないか確認してからパクリとくわえるケースもあります。


この時の黒鯛の行動を見ていると面白い泳ぎ方に気付きます。

それは、エサを発見した瞬間、エサに向かって猛突進する事です。 

そして黒鯛はエサの目の前で胸ビレを広げ旧停止、口を空けエサをパクリとくわえます。 



但し、エサに不信感を抱いた時にはくわえる行動を取らず、エサを1~5秒程度見つめ、安全か危険かを見定めてから次の行動に移ります。

安全と思った場合は、エサを再び追い掛けパクリとくわえますが、
危険と思った場合は、その場に静止したまま動かなくなったり、
沈んで行くエサを頭を下げながら見つめているだけだったり、
そのエサやハリスを避けて泳ぎ去ったり、
Uターンして逃げるようにその場を去ったりと色々な行動をとります。


この様に、黒鯛の捕食行動は静止している状態で行なわれることが多いので、釣り人の竿にはアタリが伝わるのではなく、道糸に止まるアタリがでます。

そして、その止まるアタリに気付かずにいると、竿を上げたら魚がヒットしていたり、エサを潰されたり、道糸が動いたり、竿に振動が伝わったりします。 


この黒鯛の捕食行動で明らかになる事は、エサを追い始める瞬間から捕食するまでの時間に統一性がない事です。 
なので、表層から中層に生息する黒鯛が海底付近までエサを追い掛け、最終的にエサを捕食する可能性が多いに考えられます。

以上の理由により、底付近で黒鯛が釣れた場合、釣れた黒鯛がどの水深に生息していた魚なのか判断する事ができないとの結論になります。

よって、2~3m間隔で堤防を探れば、堤防全体の、水面付近から底付近に生息する黒鯛を一通り探る事ができる』との結論となります。

これが落し込み釣りの基本的な探り方の理論であり、その理論を把握する事により、釣り方に迷うことなく探り歩くことができると思います。


そうそう。
この釣り方を確立した先代の釣り師には頭が下がります。