堤防でヒットした黒鯛は、沈み根が近くにあればその方向へ逃げますが、それ以外の魚は、堤防の近くで左右や沖に逃げ回るのが一般的です。

ヤリトリに慣れれば、意外とすんなり水面に浮いてきます。
この項目では、黒鯛を素早くキャッチする方法について記載しております。


■ヤリトリ

黒鯛を素早く水面に浮かせ取り込む秘訣は、黒鯛に主導権を握られる事なく、常に自分が黒鯛の泳ぎをリードしながらヤリトリを行なうことです。

このヤリトリに慣れれば、40~45cmの黒鯛を10~20秒でキャッチできることが多々あります。


     左図

  は黒鯛をリードしている時の道糸の状態

  は黒鯛に主導権を奪われている状態


この違いは道糸を引っ張る角度です。

の様に道糸を黒鯛の口より前方向へ引っ張れば釣り人がリードしている状態。

の様に黒鯛の口より後ろ方向に道糸がある場合は、黒鯛に主導権を握られている状態です。



基本的なヤリトリのイメージは、黒鯛を愛犬と思い行動する事です。

主人が愛犬の横や先を歩いている時は自分がリードしている状態です。

逆に、愛犬が自分の前を好きなように歩き、
首輪に繫がれたロープを握っている主人を引っ張り回しているような状態が、黒鯛に主導権を握られている状態です。

   


素早く水面に浮かせ取り込む秘訣は、
①の愛犬の散歩のように、常に黒鯛の泳ぎを自分がリードし、自分の思い描く方向へ黒鯛を引っ張り回す事です。

但し、黒鯛も逃げる事に必至です。
素直に従う黒鯛もいれば、嫌がって反対方向や沖に逃げる魚もいます。


そして、右方向へリードしようとして引っ張ると、通常は急反転し左方向や沖へ泳ぎ出します。
この時、堤防の上を歩き、再び黒鯛をリードする道糸の角度に修正します。

すると素直に従う黒鯛もいますが、嫌がって再び急反転し逆方向へ泳ぎ出す黒鯛もいます。

この様に引っ張り回す方向を変えていると、
初めは嫌がっていた黒鯛も、2~5回ほど方向転換させられると、その後は嫌がらずに人間に従います。
不思議でしょ!

  


これが、黒鯛に主導権を奪われっぱなしだと中々水面に浮いてきませんし、沖に向かって泳いだまま堤防に近づいてきません。
そして、リールに巻いた道色を全部出され、最後にはラインブレイクします。

尚、沖方向へ逃げた時は、上の画像の様に左右どちらかに引っ張ると、大人しく従う場合もありますし、嫌がって逆方向に逃げる場合もあります。

逆方向へ逃げた場合は、再び逆方向へ引っ張る。
この繰り返しで、堤防へ近づいています。


■取り込み(タモ入れ)

タモ入れのタイミングは、「水面で空気を吸わせ、動きを鈍らせてから!」と良く言います。

一般的にはその通りなのですが、私と師匠の取り込みスタイルは若干違いますのでご紹介しましょう。

今までの経験では、黒鯛が水面に顔を出した瞬間にハリが外れる事が多いので、できるだけ水面に顔を出さない様に注意しながらヤリトリを行なっています。 

また、初めて水面に顔を出した瞬間、今まで大人しかった黒鯛が急に元気を取り戻し、水中に向かって勢い良く泳ぎ出す事があります。

この瞬間にハリが外れる事も多々ありますので、基本的には、初めて水面に顔を出すタイミングでタモ入れを行なうよう心掛けています。 

但し、堤防の形状で左右に歩くスペースがない場合や、テトラ・磯などでは思い通りの取り込みができないので、水面でバチャバチャしている黒鯛をキャッチするしかありません。


    



□タモ入れまでの流れ

①の状態:黒鯛を愛犬の散歩のようにリードしながら水面付近まで引き上げます。 

②の状態:黒鯛が水面下30~60cmの位置をキープするように調整し、自分がリードしたい方向へ強引に引っ張ります。
もし黒鯛が水面に顔を出しそうになったら、道糸に掛かる負荷(テンション)を緩め、水面下30~60cmに黒鯛を誘導します。


タモを伸ばし、黒鯛の顔を水面に出すと同時にすくえるよう、タモの長さを調整し準備をします。

この時、黒鯛にタモを近づけたり、海中にタモを入れてしまうと、黒鯛が警戒し海中に潜ろうとしますので、タモは伸ばすだけで、黒鯛に近づけないようにすることが重要です。

タモの準備ができたら自分の身体を反転させ、黒鯛を強引に水面に浮かせると同時に、タモを黒鯛の頭方向から海中に差し入れすくいます。

黒鯛はタモに入るまでは自分に起きた災難に気付いていない様子で、タモに入った瞬間、危機的な状況に焦り大暴れします。

但し、このタモ入れに慣れている私でも100%成功する事はありません。
10匹キャッチした場合、1,2匹は失敗しますので、再度①~③を繰り返し対処します。



■黒鯛を素早くキャッチする理由

黒鯛はハリ外れの多い魚です。

1匹でも多くの黒鯛をキャッチするには、短時間で水面に浮かせ、初めて水面に顔を出す瞬間にキャッチする事が重要となります。

但し、釣り人によってはヒットした黒鯛とのヤリトリを楽しまれる方がいますので、取り込みのスピードはお好みでOKです。

尚、タモ入れに慣れるまでは、黒鯛の顔を水面に出し空気を吸わせる方法で動きを鈍らせてから行なうか、近くの釣り人にタモ入れをお願いした方が良いと思います。